気仙沼のサンマ船が遭難

 おととい、昨日と取材に追われた。
 おとといはほとんどのテレビ局が全国ニュースのトップで伝えていた。
 まだ石巻市漁労長の遺体しか発見されていない。
 16人中13人までが気仙沼市南三陸町の地元住民。予想外の低気圧の発達とはいえ、
「漁場に近い気仙沼港に入っていれば…」とのサンマ船関係者の声が多い。
 いまは1人でも多くの乗組員が助かることを祈るしかない。
 
 今日は快晴ながら、風は強い。2日間、サンマ関係者を中心にサイド取材に奔走した。漁船操業につきまとう危険性、防ぐ手だてなど、様々な声を聴いて回った。少なくとも30人に取材し、サンマ業界関係者の声として提稿。本紙の紙面のサイド記事となった。それと遺体で発見された漁労長の顔写真を、私のルートで入手できた。漁船員は洋上生活が長く、近所付き合いや同級会への出席も少なめ。石巻で入手に手間取っていただけに、仕事面ではやや貢献できたかと。
 今は自宅で待機中。気仙沼で過去最悪の遭難事故になるのか?そんな嫌な思いが頭をよぎる。
 昨日、訪れた行方不明者の自宅。応対してくれた家族の憔悴しきった顔。「あなた達は、人の気持ちが分からないのか!」という言葉が胸をえぐる。返す言葉なんかありゃしない。黙って頭を下げるしかない。
 「何のための取材か」「誰のための取材か」。
 報道人として何度も自問自答してきたことだ。20数年たった今も、同様の思いを抱えている。でも自分の役割を信じて、前を向くしかない。二度とこの悲劇を繰り返さないために。詭弁と言われようと、心底そう思う。