HASとENO

 まずはHAS。細野晴臣高橋ユキヒロのユニット「スケッチショー」に坂本龍一が飛び入り参加し、突如実現したHAS「ヒューマン・スポンジ・オーディオ」という時限立法みたいな「集い」が2004年にバルセロナと東京で行ったライブがDVDのみで発売された。
 曲はスケッチショーのものがほとんど、坂本教授の曲はYMO結成後のソロ第一作「B2ユニット」からの名曲「ライオット・イン・ラゴス」のみだけ(バルセロナではアンコールで、自作のサントラ曲「七人の侍」をピアノでさらっと弾いているけどね)。
 で、その演奏風景。
 坂本教授のキーボード、ユキヒロ氏の生ドラムとボーカル、細野御大のベースという「アナログ」もあれば、3人がMacのパワーブック(だと思う)のマウスを動かしているだけという場面もあり、とても不可思議な演奏風景。
 パソコン操作の後ろで、ゲストミュージシャンが生チューバを吹いていたりする(^_^; 東京ライブでは小山田圭吾がギターで参加している。
 プログラミングを使っているんだけど、即興演奏の要素もあり、3人が20年ぶりに、お互いにアイコンタクト、間合いコンタクト(これは主として教授と細野さん)を取りながら、曲をアレンジしていく。何ともいい(^ ^)
 一度、1回こっきりでYMO再結成したときは、もう全然ダメだったのにねえ。その辺はDVD収録の3人のインタビューは興味深い。
 それはそうとして。
 60近くなったオヤヂが、最先端のテクノロジーを「まったり」と駆使して、でも紡ぎ出される音楽はとても刺激的でもあり、そしてとても「気持ちいい」。
 やはりYMOの系譜は日本が誇る雅楽に通じる「音世界」と再認識。

2つ目は、イーノと元ソフトマシーンのケヴィン・エアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグランドのジョン・ケイルとニコのライブ。「JUNE 1, 1974」というタイトル通り、1974年7月1日、ロンドンのレインボーシアターで行ったライブ盤。曲によってロバート・ワイアットマイク・オールドフィールドも参加している。今から考えるとすごいメンツだ。
 イーノはロキシー・ミュージックを脱退して、ポップなソロ第1作となる名作「Here Comes The Warm Jet」を発表したばかりで、収録曲の「ドライビング・ミー・バックワーズ」と「ベイビーズ・オン・ファイアー」を今では考えられないが、とてもノリノリで歌っている(^_^;この2曲だけでも「買い!」だね。
 ケヴィン・エアーズの曲が5曲ともっとも多いが、彼らしいふわふわした浮遊感がファンにはたまらない。ニコが歌うドアーズのカバー「ジ・エンド」(映画「地獄の黙示録」に使用された)の暗さ、ジョン・ケイルが歌うエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」のヘンテコなカバーも楽しい。
 紙ジャケットなのもグッド!今まで未聴だったのを悔やむが、新たに自己的な名作を発掘できた。