ビートルズの「新作」LOVE

 インターネットで試聴したときは、かなり不安だったが、今、通して聴き終えての印象は、「良い」が「悪い」をかなり上回った。
 リンゴ・スタービートルズ時代唯一にして、レノン・マッカートニー作品にひけを取らない名曲「Octopus's Garden」(アビー・ロード収録)と、ジョンがリンゴのために書き下ろした「Good Night」を合体させた「作品」。試聴したとき一番、げんなりした「加工」だった。
 しかしその合体部分は曲のイントロ的役割で、後半は「オクトパス・ガーデン」のあの明るくセンチな世界のまんまでホッとした。
 逆に、Beatles「1」しか持ってない人には、リンゴのこの名曲を聴いてもらえるチャンスと考えることもできる。
 個人的には、ジョージの「Within You Without You」(サージェント・ペパー収録)にジョンのサイケな大傑作「Tomorrow Never Knows」を掛け合わせたものが一番面白かった。
 「Lady Madonna」は、ポールの作品の中で一番訳の分からない「Why Don't We Do It In The Road」のドラム音と、ジョンの傑作「Hey Bulldog」の、あのかっこいいギターリフ、そしてギターソロにはなんとジョージの名作「While My Guitar Gently Weeps」から、エリック・クラプトンのあの泣きのギターソロを「移植」している(^_^;悪くない。
 そうそうジョンのヘンテコソングの最右翼である「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」(サージェント・ペパー収録)の後半はなんと、これまたジョンの過剰なまでにヘヴィーな「I Want You」のリフが続く。しかもボーカルはポールのハードロック(笑)である「Helter Skelter」。いやはや。
 「I Am The Walrus」(マジカル・ミステリー・ツアー収録)なんて、もともとがコラージュ作品で、あまりいじっていない。とにかく「イエロー・サブマリン〜ソングトラック〜」と同様にリマスター効果が絶大で、音が素晴らしいので、これだけでもこのアルバムは「買い」だったりする。
 ジョンの「Revolution」はすげー。おれたちの「へたへたバンド」のレパートリーだったなあ。演奏していて気持ち良かった(聴かされた方は、ご愁傷さまだけどね)。
 もちろんあんまりいただけないのもある。「Yesterday」のイントロに「Blackbird」の3フィンガーのイントロを使うというのは、どうしたもんかなあ(^_^;
 あと、微笑ましかったのはジョージの2番目の傑作(1番目は「Here Come The Sun」ね)である「Something」で、今回の収録曲は、あのポールのこれ見よがしの「ほれほれ、どうだ聴きやがれ・ベース」の音量が小さくなっている(笑)より自然な「Something」になっているのが、素晴らしい。ポール自身の提案のような気がする。「ジョージ。お前のこの素晴らしい曲に、ちょいとおれ出しゃばったかもね」というか…。もちろんポールのベースラインは天才のなせる技なんだけど。「秘すれば花」だなあ。うんうん。

 さてさて。こうして見るとジョンの作品が多い。ポールはまだ存命だし、彼の作品は曲として個々の質感がくっきりと異なるものが多いから、あんまりいじくれなかったというのもあるかも。
 まあ賛否両論あるだろうけど、ここにある全てのメロディー、リズム、ハーモニー、そして演奏。ビートルズ・ミュージックのすごさを感じとることはできると思う。
 世界最高の音楽の詰まった「おもちゃ箱」を、床に思いっきりひっくり返したーといったところか?