デヴィッド・シルビアンの新譜が素晴らしい!

 「Manafon」(マナフォン)。

 4年前の前作「ブレーミッシュ」で新境地を開いたが、今回はさらに深化させている。
 前作は、無調のギターを軸として、そこにシルビアンの声が絡むという実験作というか、斬新な作品であった。
 音を聴いていない人は、たぶんえらい退屈な音楽、または頭でっかちの、つまらない似而非芸術作品を想像するかもしれない。
 しかし、聴くほどに、慎重に配置された背景音、そしてシルビアンの声の響きが綾なす、精妙な音世界に身を委ねることができた。

 そう。キング・クリムゾンの「トリオ」が、「ムーン・チャイルド」のインスト部分が傑作であるのと同じく、一見、いや一聴、単調な
音世界は芳醇な香りで満ちている。

 そして今作。無調のギターの尖った感じはなくなったが、楽器もノイズの一つとして活用している点は変わらない。いや、より素晴らしい効果を
与えている。切れ切れのメロディーも、とても美しい。シルビアンの声も一段と深みを増している。

 1958年2月生まれということは、同級生である(^^);彼の方が約1ヶ月早く生まれた。

 しかし「ジャパン」で、化粧を施してデビューした彼が、歩んで来た道。ルックス的にも、まさかこんな作風になるとは驚きだし、しかも51歳に
なって、このような創造力溢れ、しかも独自の世界を確立したことに敬意を表したい。

 今回も日本人アーティストが複数参加している。レコードのヒスノイズさえ、立派な楽器として機能している。

 晩秋に向かう中、ビートルズを一段落して、毎日、聴いている。